このシンポジウムは、当初、薬学関係者が血液製剤について学ぶ目的で1993年に発足したPharmaco-Hematology研究会を前進とし、それを引き継ぐ形で2000年から日本薬学会生物系薬学部会が主催してきました。毎回のシンポジウムにおける副題は、血液、免疫、炎症、がん等、血液や造血系に関連する分野の研究から、最新の知見や研究の進展をもとに決められてきました。
今回のシンポジウムは「悪液質(cachexia)に迫る・その基礎、診断、治療に向けて」をテーマにしました。急速な高齢化とともに、わが国では国民の二人に一人ががんに罹患し、三人に一人ががんで亡くなる時代を迎えました。また、医療・介護の制度の面からは、拠点病院・がん専門病院における治療から地域包括ケアの推進を目指して在宅医療への移行の重要性が叫ばれ、薬局の薬剤師の役割として、在宅医療への関与が求められるようになりました。しかし、いつの時代にも、最新の医療の発展のためには、基礎研究に向かう、たゆまぬ情熱と努力の継続が必須であり、その成果に学びそれを応用して、患者の苦しみを取り除こうとする医療人の献身的な行為が必要とされます。この度のテーマの悪液質(cachexia)は、非常に古くて新しいテーマだと思います。分子レベルでの疾患の本態の理解が進みつつある今、本シンポジウムを通じて、Pharmaco-Hematologyを基盤とする様々な角度から、あらたな研究・治療・診断・検査等へのヒントが生まれることを祈念しています。
発表はランチョンセミナーにおける悪液質についての教育講演、シンポジウムでの各界からの講演に加え、口頭発表・ポスター発表を計画しています。なお、ポスター発表については、学部学生、大学院学生を対象とする優秀発表賞の表彰を予定しています。
実行委員長天野 富美夫
(大阪薬科大学)